他の先生の「ふだんの教室」へ、現役の先生が行くことの意味

ここで書いた記事は、facebookやTwitter上にも挙げているのだが、そこで信頼している先生や教育関係者の方にコメントをいただけたのが嬉しかった〜。こういう記事を書くとき、一人ひとりの先生の、具体的な授業の在りようを思い浮かべながら書いているから。

さて表題の件。コメントのなかに、(他の学校の)先生の授業を参観しに行きたいけれどなかなか制度的に難しくて(泣)といった趣旨のコメントがあったのだが、これには個人的に激しく肯いた。

「よそ行き」の授業や研修を見ても、台本通りに進むバラエティ番組を見るのと同じで、どこか白けるし、学びは少ない。今まさに自分の現場を持つ教師同士で、相手の教室(授業)の中に自分の身体を置くからこそ得られる学びの深さが、絶対にあるのだ。

※例えば、あすこまさんのKAIさんの教室訪問記は、特にその例証となる良記事。ぜひご一読を。

この「深み」はかなり感覚的な部分なので、端的に言おうとすると少々ポエム的な表現になってしまうのだけれど、自分とは違う身体によって実践されている授業を見ると、身体がむずむずと動き出し、オートマティックに授業の流れを予測し出すのである。

つまり、他の先生による授業を目の当たりにしていると、“自分だったらこうするだろうな”と自分の身体がオートマティックに授業の流れを予測し、動き出そうとするのだが、その予測とはズレる他者の身体の動かし方をみて、自分の教え方(教える身体のモード)について、リフレクション(省察)がゆっくりと、カラカラと動き出すのである。

「あっ、そこで問いかけないんだ。自分なら話しかけちゃうなあ」

「ああ、時間と時間の間がすごい緩やかだ…。自分だったらもうちょい、きちっとさせちゃうかも」

「…でも、なんで自分は“もうちょい”きちっとさせないと気持ち悪いんだろう?」

感覚的にいうと、自分とは違う価値観を持つ他者の身体の動かし方を見ると、自分は“そっちに行けないな”、“そっちには体を動かせないな”という、「見えない壁に直面している感覚」が訪れるはずなのだ。そしてその訪れは、自分が無自覚に培ってきた、「授業を見る身体」に気づく学びのチャンスだし、自分の「授業を創る身体」に気づくチャンスでもあるのだ。

その機会こそは、自分(の身体)が培ってきた授業の「当たり前」や「思い込み」に、他者の身体を通して気づくことのできる機会であり、その気づきを通じて、自分が授業を見たり創ったりするときに着目しがちなこと/見逃してしまいがちなことを、メタに振り返ることができる(=自分の授業を見る/創る身体に気づく)得難い機会なのだ。

ちょっと学問的な方向に話を降ると、「身体」とは、ある状況の中で常に、実践的な目標をそのつどめがけて動いて行く存在なのである(メルロー=ポンティ)。

その意味で「身体」は、はじめは未体験の状況だったとしても、繰り返し同じ状況下で適切な目標を選び出すことに慣れてくると、オートマティックに目標を選出し実現して行くことのできる「賢さ」を持っている。

例えば、サッカーのルールもプレイの仕方もわからなかった子どもが、他の子の身体の動かし方を見て、繰り返しゲームという特殊な状況の中を生きることによって、サッカーのプレイの仕方をなかば“自動的に”習得することができていくように。

 

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↑身体は面白い。目線、身体の軸、重心、様々な“自動的な”計算の上に、実践は成立する。

そんな賢さもある一方、オートマティックに動けるようになった自分の身体の「クセ」は、ふだんあまりにも当たり前に、目標を「目標」とも思わずに動いて行くから--PCの文章を書いている時や読んでいる時、いちいち自分の身体がどう動いているか、目は何を目標にしてどう動いているか、手は何を目標にしてどう動いているかなんて、考えないでしょう--なかなか自覚できない。

授業は他ならぬ自分の何十年生きてきたオリジナルな身体を用いる営みだからこそ、この身体の培ってきた「賢さ」を利用しない手はない(というより、自分の身体をリソースにして実践して行く他はない)。しかしながら、自分の身体を利用するには、自分の身体がどんな状況でどんな目標を選び出すクセを持っているか、自覚する必要があるのである。

そして、身体の自覚のためのとっておきの機会こそ、「日々授業を作り続けている状態の身体を持つ教師」が、「同じく日々授業を作り続けている状態の身体を持つ、他の教師の授業」と出会い、互いの身体の培ってきたクセの違いを自覚できる場、つまり「普段の授業の参観」なのである。

常々思っていたことを書き始めて見ると、意外にこれは大変な議論になりそうだ。このことについて語り始めると多分論文3本ぐらい必要になるな。。

 

 

 

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