幸福の3要因

積ん読になっていたショーペンハウアーの『幸福について』(『処世術箴言』)を読んでみた。解釈学を平らげたときに参照したくらいであまり読んでいなかったのだけど、すごく面白い。

彼によれば、「人のあり様」「人の有するもの」「人の印象の与え方」の3つに応じて人間的な幸福と不幸が規定される。原理的に言い換えたら、自分の個性、資本、表象(イメージ)の3つの要因に応じて幸福感が変わる。

この3つのうち、個性は時を超えて不変だけれど、資本と表象はその都度変わっていく。また、たとえ同じ量の資本を持ち、他人から同じようなイメージを抱かれていても、結局はそのひとの人柄(個性)次第で当人の幸福感はまったく変わってしまう。

細かい話を割愛すれば、彼は資本の増減やイメージの良し悪しにいちいち拘らずに、まず自分の「個性」を充実させ、それを活かす仕事に取り組み、資本とイメージを整え、退屈や困窮に振り回されない「自由な余暇」を過ごせるようになることが幸福に近づく道だとする。

けれど、ショーペンハウアーが面白いのは、この主張が自分の一番言いたいことではないと最初から断言しているところだ。この箴言集の最初で、「人間は幸福に生きるために生まれてきた」という考え方を「人間がよく陥る迷妄」だと切って捨てている(笑)。この最初に否定しておいてからの搦め手は、どこかツンデレ属性のようにも感じる。

とても現実的で世俗的なバランス感覚を大事にするとともに、厭世的に理性的な思想も尊んでいる。この矛盾した感じが、逆に生活感が滲み出ていて好きな著作だ。

 

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中